残業時間のカウントについて、「社員が勝手に遅くまで残っている」というお話をよく伺います。その際に「この時間も残業時間としてカウントし、残業手当を支払わなければならないのでしょうか?」とのご相談も多くお受けします。
残業時間の悩みは様々ですが、今回のお話は大きな会社から数人の会社まで、本当に多くの経営者が悩んでいます。裏を返せば、労働時間の定義を理解されている方が少ないといえるでしょう。法的に労働時間とは以下の定義となっています。
それは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」となります。
しかし、これを具体的に落とすのが難しいので、様々な問題、解釈があるのでしょう。
特に時間管理を把握するための方法でタイムカードやICカードを導入している場合で、労働時間の管理もこれのみで実施している場合は注意が必要です。
なぜなら、「特段の事情がない限り、タイムカードの打刻時刻等を始業終業時刻と推定する」のが裁判の傾向です。以下の裁判が上記の判断を行っています。
〇 京都福田事件 大阪高裁 平成元年2月21日
〇 三晃印刷事件 東京高裁 平成10年9月16日
また、労働基準監督署は「特段の事情がない限り、打刻時刻を始業終業時刻とみなす」となっています。しかし、タイムカード等が労働時間管理のためではなく、出退勤や施設管理のために設置されていた場合、「直ちに打刻時刻を始業終業とはされない」と判断された裁判もあるのです。以下がその裁判です。
〇 三好屋商店事件 東京地裁 昭和63年5月27日
〇 北洋電気事件 大阪地裁 平成元年4月20日
〇 オリエンタルモーター事件 東京高裁 平成25年11月21日
このように、タイムカードがあるからといっても、労働時間の管理方法で異なる判断が下されるのです。では、だらだら残業を禁止するにはどのような方法があるでしょうか?
これは残業を禁止することを口頭や文章などで社員に伝えることが重要です。
法律の労働時間とは、労働者に実際に労働させる実労働時間、すなわち「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいうものです。
そして、その判断は、
(1)当該業務の提供行為の有無
(2)労働契約上の義務付けの有無
(3)義務付けに伴う場所的、時間的拘束性(労務の提供が一定の場所で行うことを余儀なくされ、かつ時間を自由に利用できない状態)の有無、程度
以上を総合考慮して、社会通念に照らし、客観的にみて、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かという観点から行われるべきものとなっています。