労務の問題が発生すると、会社だけではなく社長をはじめとする取締役個人にも責任追及がなされるケースがあります。
そして、この事例は最近増加傾向にあるのです。
会社を経営している社長をはじめとすると取締役は自分自身のリスクを考える必要があるのです。
特に、裁判や労働行政で問題となる要因が「解雇」、「労災」、「未払い残業」などが多いです。
今回は労災に関する問題で、取締役個人にどのような責任がかかってくるのかをみてみましょう。
これに関する裁判があります。
<サンチャレンジ事件 東京地裁 平成26年11月4日>
〇 飲食店チェーンの店長だった男性(当時24歳)が自殺した。
→ 遺書を残して店舗が入るビルの非常階段で自殺した。
〇 自殺は、長時間労働とパワーハラスメント(パワハラ)が原因として両親が裁判を起こした。
→ 会社と上司らに約7,300万円の損害賠償を求めた
そして、裁判所は以下の判断をしました。
〇 裁判所は上司と社長の個人責任も認めた。
→ ほかに自殺の原因は認められない
〇 本人には過失がないとした。
〇 約5,790万円の支払いを命じた。
この裁判を詳しくみてみましょう。
男性が自殺前の7カ月間の残業時間は月平均190時間を超え、総労働時間は月平均360時間に達していたのです。
さらに、渋谷労働基準監督署は自殺を労災と認定しました。
裁判所は判決理由で、男性は遅くとも自殺の約2年9カ月前から恒常的に1日12時間以上働き、休日もほとんどなかったと認定したのです。
また、ミスのたびに上司から頭をなぐられるといった暴行を受けるなど「社会通念上相当と認められる限度を明らかに超える暴言や嫌がらせ、プライベートへの干渉などがあった」と指摘しました。
そして、この件についても自殺との因果関係を認めたのです。
会社側は「金銭問題や家族との確執などが自殺の原因だ」と主張しました。
しかし、判決はいずれも「証拠がない」と退けられたのです。
この裁判は「長時間労働とパワハラのほかに自殺の原因は見当たらない」として過失相殺を認めなかったのです。
さらに、裁判所は上司と社長の個人責任も認めたのです。
上司はパワハラ、社長は社員の長時間労働やパワハラ防止のため何ら有効な対策を採らなかった為、故意または重大な過失が認められるとなったのです。
この裁判で注目するポイントとしては、上司、役員は長時間労働、パワハラについて、個々の社員のその長時間労働や健康状態などは容易に会社は認識しているとし、過失を認定しています。
長時間労働は、あらゆるトラブルの原因となるので、真剣に労務管理の見直しなどを行うことが重要なのです。